【長生き犬ごはん】の著者、林先生に聞く!犬の食と健康のお話
長生き犬ごはんの著者、林先生をお招きして犬のごはんについてお伺いしました
北川:今日は楽天やアマゾンで1位になり増版も決まっている「長生き犬ごはん」の著者で訪問診療や代替療法に特化した獣医師林先生に、ペットの食と健康についてお話を伺います。
林先生、よろしくお願いいたします。
林先生:飼い主さんご自身が知識を身につけることによって、ペットと飼い主さんのより幸せな生活のために生かしてもらえたらと思います。よろしくお願いします。
北川:手作りごはんはどのような効果がありますか。
林先生:生きた酵素や旬のものをとれること、一緒に食べることによって食べる楽しみを共有できます。ペットの手作りごはんなんて専門知識が必要なんじゃないの?と思うかたもいるかもしれませんが、人と動物の共通する点も多いので、バランスに気をつければ簡単にできます。
北川:手作りごはんを飼い主さんが簡単に取り入れられるものはありますか?
林先生:今回私が出版した本はまさに、気負わず手軽にだれでもすぐに生活にとりいれられるような内容のものになっています。費用でいうと、5キロ程度の小さいワンちゃんならご自身のぶんの食費プラス月に5000円程度で手作り食ができてしまいます。昆布を水につけてだしをとるだけ、お肉やお野菜を切ってゆでるだけなど、専門知識や特殊な食材は必要なく手軽に始められるので、みなさんに実践してみてほしいです。
北川:林先生は薬膳にも精通されていらっしゃるのですよね。薬膳を一般の方が取り入れることはできますか?
林先生:薬膳ふりかけなど人気があります。手軽に取り入れられるもので言えば体がむくんだらトウモロコシ茶、疲れたらすっぱいものなど、ちょっとしたことから取り入れられることがたくさんあります。
北川:最近はアレルギーを持つペットも多いですが、何かおすすめのものはありますか?
林先生:アレルギーのような症状には、西洋のお薬で症状を抑えながら身体の内側から立て直しをすることが重要と考えています。西洋医学では繰り返したり対応しきれないような場合でも、東洋医学や代替療法の考え方を取り入れると症状が治まったり改善できるものもあります。例えばフレンチブルドッグちゃんに多い皮膚病ですが、低アレルギー食をといわれてアレルギー対策食を使うことがあります。ただ、アレルギーの療法食によく使われているラム肉には体をあたためる効果があるため、フレンチブルドッグちゃんのような熱のこもりやすい犬種のワンちゃんにあげてしまうと熱がこもってジュクジュクして皮膚病が悪化してしまうこともあります。キュウリやトマトなどのトッピングで体を冷やす野菜を付けてあげるといいでしょう。呼吸がはやくなったり、からだが熱くなったり、黒い目やにが流れているときは、身体に熱が籠っているサインになります。彼らは汗をかかないので、呼吸で熱を出すか、おしっこで熱を出して体温を調節します。水分補給をしっかり行って、おしっこで熱を出していくのも大事かなと思います。
北川:水分は未病の観点からも大切なのですね。
林先生:はい。全身をめぐる水をとることは大切なことなので、しっかり水分をとれるよう心掛けてあげてください。とくにネコちゃんにおおい尿路結石は、水分をとって流してあげるようにすると、すぐに落ち着くことが多いです。ワンちゃんでも犬種によっては尿路結石・膀胱結石ができやすいので、日頃から水分補給を心掛けた方がいいですね。
北川:どのように対策したらお水をたくさん摂れるでしょうか?
林先生:日頃の食事に水分を多く含む生食を取り入れてあげたり、普段のフードに水をかけてふやかして与えてあげたりすると、自然に水分をとることができます。水飲み場の場所やお皿の材質や水温などを変えてあげると、飲み方が変わってデリケートなワンちゃんネコちゃんなどもたくさん水を飲むようになることがあります。とくに好みやこだわりがあるネコちゃんは流れる水が好きな仔が多く、水道から流れ落ちる水を直接のむことが好きな仔や循環型の水のみ器を好む仔もいます。
腎不全は水分が天敵といわれていますが、水が巡っていかずにたまってしまうことも問題です。せっかく水分補給しても、体の巡りが滞ってしまうとただのむくみや冷えとなり、腎臓に負担をかけていることがあります。下半身の冷えをとってあげるといいので、一年中腹巻を付けているような仔もいます。東洋医学的に腰側には重要なツボが多いので、冷えて巡りが滞ってしまわないようにすることも重要です。
北川:手作り食や生食は水分をたくさん与えられそうですが、ワンちゃんネコちゃんにあげる際の注意点などありますか?
林先生:犬や猫の胃酸は強いので、菌には強くて食中毒にはなりにくいですが、生食で与える場合には、生食用として売られているものだけにしていただくのが安心です。
人間用に売っているお刺身ならそのままあげても大丈夫です。ただし、生のイカやタコ、甲殻類貝類はやめたほうがいいです。ホタテは火を通せば、亜鉛が豊富で肉球のカサカサなどに効果があるので、貝柱とお野菜の切れ端でスープを作ってあげるのもいいかもしれません。
北川:市販のフードにトッピングしたり、手軽に取り入れられそうなものが多いのですね。
林先生:はい。本にも簡単に始められるレシピがたくさん載っています。たとえば、黒い食品は東洋医学で言う『腎(腎臓、生殖器、ホルモン系など)』のエネルギーを補う食材なので、シニア犬や繁殖リタイアで『腎』を消耗している保護犬保護猫ちゃんなどにおすすめしています。昆布を水でもどしてダシをとったり、黒豆をつかってスープを作ってあげたりするといいでしょう。人間用のお料理とそこまで変わらないので、ワンちゃんネコちゃんの食べてはいけない食材と基本の栄養バランスだけ抑えていれば、気負わなくて大丈夫です。
北川:手作り食のバラエティに富んだお食事は、食べる楽しみが広がりそうですね。お忙しいかたや挑戦してみたいけれど栄養管理の面で不安な方は、WePetのブラバンソンヌもおすすめです。単一タンパクにこだわって作られているので、体調の変化も観察しやすいですし、種類も豊富ですね。
林先生:保存がきいて持ち運びもしやすく品質管理も簡単なペットフードは、防災の観点からも常備して日頃から食べさせる練習はしておいた方がいいですね。毎日栄養管理した手作り食は荷が重いという人も、ペットフードをメインにしてトッピングを付ける形でもワンちゃんネコちゃんはけっこう喜びます。あとは、バランスをとるためにも食材やペットフードをローテーションするのはいいと思います。手作り食の場合は特に、1か月単位でのトータルバランスをとれるように栄養素の意識をして、不安がある際は血液検査や体重測定などの目に見える数値でコントロールしてあげると安心ですね。
北川:ダイエットの際に気を付けることはありますか?
林先生:ダイエットで気を付けた方がいいのは、炭水化物を摂りすぎると太りやすくなるだけでなく、膵炎になることもあります。多くの安価なフードには、カサ増しのためにサトウキビの搾りかすであるビートバルプなどが入っています。お腹をいっぱいにしてくれてダイエットに効果がある繊維が多いという利点もありますが、消化に負担がかかって腸が疲れて免疫が下がる可能性があります。フードの成分値をよく見て、ダイエット食は体重が戻ってきたらやめるなど、体に負担のかかるフードは長期的な利用は控えた方がいいかもしれません。
北川:その点でもブラバンソンヌは消化管に負担をかけにくい消化性の高いタンパク質、炭水化物を含む原材料を使用しているので安心ですね。
林先生:そうですね。手作り食を希望される飼い主さんの多くは、原材料のわからないものを食べさせたくないという思いからご自身で食品を購入して手作りされています。「ヒューマングレード」と明記してあるメーカーさんは安心ですね。大型犬はとくにタンパク質が足りていなくて筋肉がつかずにブヨブヨの体をした仔が多く見受けられます。40キロの犬は約280グラムのタンパク質が必要で、それを肉で取ると1.3キロほど必要になります。手作りや生食だけでは難しい数字ですね。
北川:安心して与えられるペットフードの選び方を教えてください。
林先生:ヒューマングレードの食材が使われているというのは安心材料の一つです。また、発がん性のある酸化防止剤を使っているようなフードも多いので注意が必要ですね。
低温でゆっくり脱水したチキンのタンパク質は、チキン本来の栄養価消化吸収力が高いので、消化力と腸運動を促進、天然のオリゴ糖により腸内細菌のバランスを調整し、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を絶妙なバランスで配合することで、健康的な糞便の維持をサポートします。
自然の免疫力
バランスよく配合された豊富なビタミン類、野菜由来のβ-カロテン、食物繊維、ミネラル、抗酸化作用が犬本来の免疫力の維持をサポートします。
下部尿路の健康維持
尿中pHを低下させるクランベリーを使用することで、下部尿路の健康維持をサポートします。
美しく健康な皮膚と毛艶
亜麻仁とサーモンオイルに含まれる豊富なオメガ-3脂肪酸/オメガ-6脂肪酸やDHA/EPAが健康な皮膚と美しい毛艶をサポートします。
北川:食事の与え方では気を付ける点はありますか?
林先生:時間は決まった時間でなくてもいいのですが、大幅にずらすと体内時計がくるってしまう可能性があるので避けた方が無難でしょう。朝に吐いたり、お散歩中に草を食べたがったりしたら、空腹で胃酸が出てきている可能性があります。ごはんを小分けに与えて胃腸をいたわってあげましょう。
あとは、静かなところの方が食べられる仔が多いように思います。人が多かったり、見られたりしていると食べられない子もいるので、落ち着いて食べられる環境を整えてあげましょう。粉チーズやカツオ節、砂糖不使用のきなこ、ひき肉を使ったそぼろなどは好きな仔が多いので、食の細い仔にはトッピングしてあげると食いつきがよくなるようです。
北川:最後に愛犬・愛猫家の皆様にお伝えしたいことはありますか?
林先生:どんなお食事にも一番必要なのは「ビタミンL」=飼い主さんのラブ」だと聞いたことがあります。わたしは、飼い主さんがペットのことを気遣って選んだフードや手作り食には、必ず「ビタミンL」が入っていると思います。私たち獣医師ももちろんホームドクターやセカンドオピニオンとしてワンちゃんネコちゃんの健康をサポートしていますが、日々一緒にいてお世話をしている飼い主さんが一番の主治医です。出された薬が何なのか、どんな食べ物が好きで健康のためにも効果があるのか、「長生き犬ごはん」の本はもちろん、ペットの食育に関するセミナーもたくさん開催されていますし、いまはインターネットでも検索はできます。一番近くにいる飼い主さんに、小さな家族を守るための知識を身に着けてほしいですね。
プロフィール:獣医師 林 美彩(はやし みさえ)
毎日の食べるもので体が作られていくという両親の教えのもと、大学時代に愛犬・茜を迎えたことをきっかけに、手作り食の勉強を始める。
大学卒業後は、代替療法・西洋医学両方の動物病院の勤務し、その後、サプリメント会社での相談応対に従事。
西洋医学と代替療法の良いとこどりをした治療、病気にならない体作り、家庭でできるケアを広めるため、2018年3月に代替療法の往診専門動物病院『chicoどうぶつ診療所』(東京)を開院。現在、全国より数々の相談を受けている。獣医保健ソーシャルワーク協会所属。