【獣医師監修】犬猫のてんかん発作について|原因や症状、治療方法を解説
てんかん発作は人でも犬猫でも一般的に認められる神経症状であり、てんかん発作を主体とする病気「てんかん」は犬猫で最も多い脳疾患です。
てんかん発作を目撃したとき、このまま亡くなってしまうのではないかと不安になりますが、一般に数分以内におさまります。
今回はてんかん発作について解説をいたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
てんかん発作のタイプ
1.全般発作
脳全体が一気に一斉に異常興奮をおこす発作
・強直間代性発作(けいれん性)
突然、全身が強く硬直して横倒しになり、その後次第にバタバタと全身の筋肉が収縮したり弛緩したりして脚が伸びたり縮んだりするけいれんになって終了する。
発作中意識はなく、よだれ(泡をふく)、尿失禁や便失禁
症状が起こる時間:たいていは数十秒から数分である。
・ミオクロニー発作(けいれん性)
突然かつ瞬間的に電気ショックを受けたように全身がビクビクッとなり、後ろに倒れるような、あるいは尻餅をつくような状態になる。
症状が起こる時間:1回の発作は一瞬から数秒。
・脱力発作(非けいれん性)
突然かつ瞬間的に全身の筋力がなくなり、立っていたり、座っていたりすればストンと全身が床に落ちてしまう。あるいは横に倒れてしまうような発作である。
伏せていれば頭だけがストンと落ちる。
症状が起こる時間:1回の発作は一瞬から数秒。
2.焦点発作
脳の一部のみが異常興奮する発作、発作の症状はその興奮した場所の症状が出る。最初に興奮した場所から周辺に発作が拡がり、最終的に全般発作になることもある
・運動発作(けいれん性)
身体の一部分が引きつったり、けいれんしたりする。
意識もあったり、なかったりし、基本的には毎回同じ場所から始まる。
症状が起こる時間:通常は数十秒から数分(5分以内)だが、まれにより長いこともある。
・自律神経発作(非けいれん性)
よだれ、瞳孔散大(黒目が大きくなる)、毛が逆立つ、吐く、尿や便を:添らす、下するなどの症状。
症状が起こる時間:数十秒から数分間続く。
・行動発作(非けいれん性)
全く動かなくなる、どこか一点を見つめる、虫を追うような行動、口をもぐもぐくちゃくちゃする、舌舐めずりやあくび、同じ行動を繰り返す、不安や恐怖を感じているような行動、一定方向に回り続ける、狂ったように走り回る、など奇っ怪な行動をする。
症状が起こる時間:数十秒から数分間
てんかんの発生率
・人と犬:約0.7〜1%
・猫:0.5~1%
てんかんの診断
てんかん発作らしき症状が出た場合は、その時の様子を動画で撮影して、動物病院に行くようにしましょう。獣医師が判断しやすいように冷静になることが大切です。
動物病院での診断は、以下のような診断が行われます。
- どのような発作だったのか
- 身体検査や神経学的検査
- 血液検査や尿検査など
てんかんの診断には獣医てんかんの国際団体(国際獣医てんかん特別委員会 IVETF)が提唱する3段階の国際基準があり、多くの場合、それに沿って診断が進められます
- 第1段階:一般的な動物病院で行われる検査
- 第2段階:MRI装置を有するような二次診療施設で行われる検査
- 第3段階:大学病院など神経科専門医で行われる検査
てんかんの種類
大きく分けて特発性てんかん、原因不明のてんかん、構造的てんかん、そしててんかん以外の反応性発作(非てんかん性発作、急性症候性発作ともよばれる)に分けられます。
・特発性てんかん
脳に明らかな肉眼的異常は認められず 24時間以上の間隔を空けて2回以上のてんかん発作を起こす病態。
犬では6ヵ月齢~6歳(猫では7歳?)までに発症し発作がないときは何ら異常が無いのが一般的。
治療はてんかん発作のコントロールのみとなり、通常は抗てんかん発作薬という種類の薬の内服で治療していくことになる。
・原因不明のてんかん
発症年齢が特発性てんかんで定義される 6ヵ月齢~6歳から外れるが構造的病変が認められないてんかん。
または、てんかん発作以外に神経学的検査で異常が認められるもののMRI や脳脊髄液検査に異常が認められないてんかん。
・構造的てんかん
MRI や脳脊髄液検査などで脳に明らかな異常が検出され、24時間以上の間隔を空けて2回以上のてんかん発作を起こす病態。
治療は、構造的てんかんはその原因によって、抗てんかん発作薬による発作コントロールの他に原因に対する治療、例えば脳腫瘍であれば手術や放射線治療、脳炎であれば免疫抑制治療などを行っていく必要があるため、特発性なのか構造的なのかをMRIと脳脊髄液検査で鑑別することが極めて重要なポイントになる。
・てんかん以外の反応性発作
発作の原因が脳以外にあるもの。
脳の周りの環境が異常になった際に、脳が示す生理的な反応として発作が生じる。
反応性発作は、脳には異常はない。通常血液検査や尿検査などの一般的な検査である程度診断することが可能となる。
飼い主が行う対応
発作が起こった時は、冷静に対処し、見守るようにしましょう。
初めててんかん発作を見た時には、誰もが驚いて、パニックになってしまうかもしれません。
冷静にその時の様子を動画で撮影して、すぐに病院へ連れて行きましょう。
- 周囲の危険なものや小さいお子様などを遠ざける
- 動画を撮る、時間を計る・記録する、発作の症状を細かく観察する
- 身体の周りにクッションなどを置いて、頭や身体をぶつけても痛くないようにする
犬猫の種類や年齢、症状によって対応は変わりますので、詳しくは担当の動物病院の先生に相談をするようにしてください。
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獣医師:丸田 香緒里
◆丸田 香緒里 プロフィール
日本大学卒。動物病院勤務後、「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。ペット栄養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、メンタルケアカウンセラーなどの資格を生かし、病院での診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、企業顧問、製品開発など活動は多岐にわたる。
HP:http://animallifepartner.com/