【獣医師監修】咳・くしゃみの原因と対処法(犬・猫)
咳やくしゃみは元々、体の中に入ってくる異物を外に出すための生理的な反応です。しかし、病的なものや危険なサインになることもあるので、どんな原因があるのか、また注意点についてもお話していきます。
咳の原因
■生理的なもの
ほこりや煙、小さな異物などを吸い込んでしまった場合。
一時的ですぐにおさまる。
■持続的な咳
・ケンネルコフ
複数の細菌やウイルスが原因となる犬の伝染性気管支炎で,集団の中で主に子犬や免疫力の低下している犬に感染しやすいです。
・気管支炎
細菌やウイルスの感染や刺激物の吸引などにより気管に炎症が起こり咳や息苦しさがみられます。
・喘息
主に猫でみられ、何らかのアレルゲンが原因で咳や呼吸困難が起こる病気です。
首を伸ばしてコンコンと苦しそうな咳がみられます。
・気管虚脱
ヨークシャーテリアやポメラニアンなどの小型犬で多くみられる、気管がつぶれて呼吸 困難を起こす病気です。ガーガーという呼吸音が聞こえることがあります。
・心臓病
弁膜症や心筋症などの心臓病が進行すると、大きくなった心臓がその上にある気管を刺激して咳が出やすくなります。
・肺炎
細菌やウイルス感染、誤嚥などが原因で肺に炎症が起こる病気です。呼吸困難や発熱が見られることもあります。
・肺水腫
心臓病などが原因で肺に水が溜まってしまう病気です。食欲不振や苦しそうな呼吸がみられ、咳とともに血の混じった泡を吐き出すことがあります。
・肺腫瘍
まれな病気ですが、肺の組織に腫瘍ができ、しつこい咳や呼吸困難の原因になることがあります。
咳が持続的にみられる場合は何らかの異常が考えられますので、早めに動物病院を受診しましょう。
呼吸困難がある、舌が青紫色になっているなどの症状がある場合は緊急性が高く、速やかに病院へ連れて行きましょう。
咳が出る時は、なるべく興奮するような遊びや活動は避け、お家の中では適度な換気と加湿が大切です。
首輪は咳を誘発する可能性があるので、出来ればハーネスタイプのリードに変えてあげると良いでしょう。
くしゃみの原因
■生理的
埃や冷気、刺激の強いにおいを嗅ぐことでくしゃみがでることがあります。
■持続的なくしゃみ
・異物
吸い込んでしまった小さな異物が鼻の中に残ってしまうと激しくくしゃみを連発することがあります。
・アレルギー
花粉やハウスダストなどのアレルゲンがくしゃみを引き起こすことがあります。他に、皮膚のかゆみや赤みなど皮膚症状が一緒にみられる場合もあります。
・歯周病
上顎の犬歯や前臼歯の根本は鼻の奥と非常に近い位置にあり、歯周病などで根本まで炎症が進んでしまうと鼻の奥と歯茎をつなぐ穴があいて鼻炎が起こり、くしゃみや鼻出血がみられるようになります。
・感染
細菌、ウイルス、カビなどの感染症の症状のひとつとしてくしゃみが認められることがあります。発熱や元気食欲の低下など全身症状が伴うこともあります。
・慢性鼻炎
ミニチュアダックスフントなど鼻筋が長い犬種でみられ、鼻づまりや粘り気の強い鼻汁などが特徴です。
・鼻腔内腫瘍、ポリープ
一般的な鼻炎の治療では改善せず症状が続く場合や、鼻出血や鼻筋の変形が認められる場合などに疑われます。
頭部レントゲン、CT、MRIなどの画像診断が必要になります。
・副鼻腔炎、蓄膿症
感染などにより鼻炎が慢性化し、鼻の奥の副鼻腔という空洞にも炎症が広がると、そこに膿がたまり副鼻腔炎や蓄膿症と呼ばれる状態になります。鼻づまりやくしゃみ、黄色っぽい粘り気のある鼻水などがみられます。
くしゃみが続く場合や、鼻水に黄色や緑色など色がついている場合、鼻出血がある場合、発熱や元気・食欲の低下など他の症状があるときは動物病院の受診が必要です。
お家の環境中に芳香剤や香水、お香など香りの強いものは刺激となることがあるので置くのを避け、お部屋の温度、湿度を適切に保ってあげましょう。
粘り気のある鼻水がみられる場合は、鼻の出口で固まって鼻の穴をふさいでしまったり皮膚炎の原因にもなりますので、ガーゼなど柔らかい布を湿らせたものでやさしくふき取ってあげましょう。
【獣医師監修】ペットがご飯を食べない・水を飲まないときの原因と対処法
獣医師:丸田 香緒里
◆丸田 香緒里 プロフィール
日本大学卒。動物病院勤務後、「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。ペット栄養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、メンタルケアカウンセラーなどの資格を生かし、病院での診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、企業顧問、製品開発など活動は多岐にわたる。
HP:http://animallifepartner.com/