【獣医師監修】犬猫の脱毛について
犬猫の皮膚は全身が毛で覆われているので、脱毛は飼い主さんが気づきやすいトラブルの一つでもあります。今回のコラムは脱毛が見られたときに気を付けるポイントや、原因となる疾患についてお話していきます。
脱毛が見られたら気を付けるポイント
脱毛している部位と脱毛の範囲
脱毛の仕方にも様々なタイプがあり、局所的にポコッと円形に抜けている場合もあれば、広範囲に毛が薄くなっている場合など色々なパターンがあります。一か所脱毛が見られたら、他にも脱毛がないか全身をチェックしてみましょう。
脱毛が見られやすい部位
・頭部(目の周り、鼻梁部、口周り、頬、耳)
・首まわり ・四肢 ・足先 ・腰背部 ・しっぽ
・四肢の付け根の内側 ・お腹 など
脱毛しているところの皮膚の変化
脱毛している箇所の皮膚の状態の変化は大切な情報になります。以下のような皮膚の変化があることもあれば、全く問題ない場合もあります。
皮膚の状態の変化の例
・湿疹、赤み、ただれ
・フケが出ている
・ベタベタしている
・色素沈着
・黒い点々がついている など
痒みの有無
患部を後ろ足でしきりに搔いている、舐めたり噛んだりしているなど、痒がるしぐさがあるかよく観察しましょう。
他の症状の有無
皮膚の変化の他に気になる症状はありませんか?一見関係ないと思われることも脱毛の原因と関連していることがあります。
症状の例
・元気がない ・水をたくさん飲む ・おしっこの量が多い
・お腹がぽっこり膨れている ・下痢や嘔吐などの消化器症状
脱毛が起こる病気
感染性皮膚炎
・外部寄生虫性皮膚炎(ダニ、疥癬、ニキビダニ など)
皮膚に寄生する寄生虫により強いかゆみや脱毛、皮膚炎など
がみられます。
・細菌性皮膚炎(膿皮症)
皮膚に細菌が感染することにより、円形の脱毛や皮膚の炎症が起こります。
・真菌性皮膚炎
カビの感染による皮膚炎で、代表的なものにはマラセチア性皮膚炎と皮膚糸状菌症があります。脱毛や皮膚の赤み、フケなどがみられます。
アレルギー性/アトピー性皮膚炎
環境中のアレルゲンや食物などに反応して強いかゆみを呈する病気で、脱毛や皮膚の炎症がみられます。
一見皮膚の変化がないように見えても、皮膚のかゆみで患部を噛むことにより切毛(毛が途中で切れている状態)が見られることがあります。
内分泌疾患
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、甲状腺機能低下症、性ホルモン異常は脱毛がみられる代表的な疾患で、左右対称性の脱毛が特徴的です。かゆみや炎症が認められないこともあります。
ストレス性(心因性)脱毛
環境の変化や日常的なストレスにより、過剰に皮膚を舐めたり噛んだりすることで起こる脱毛です。肢、お腹など舐めやすいところに見られることが多いです。
皮膚腫瘍
肥満細胞腫、皮膚リンパ腫など皮膚にできる腫瘍により脱毛や皮膚炎が認められることがあります。皮膚にしこりや局面(軽度の腫れ)などがみられたり、食欲不振や元気消失など全身症状がある場合に疑うことがあります。
脱毛がみられたら動物病院では何をするの?
脱毛が主訴の場合、問診や身体検査で脱毛の範囲や皮膚の炎症の有無、症状の経過などを把握し、考えられる病気を絞り込みます。
その上で皮膚の検査などをご提案する場合もありますし、視診のみでお薬をお出しする場合もあります。まず一般的な皮膚の治療をしてみて反応性をみながら次のステップに進むことも多く、中~長期的に治療が必要になる場合もあります。
また、舐めたり噛んだりするのを防ぐためにエリザベスカラーの装着やお洋服を着てもらうこともあります。
まとめ
脱毛は、皮膚の病気以外に全身性の病気のサインになることもあります。
脱毛はあるけどかゆみがないから大丈夫、など自己判断することは避け、早めに動物病院を受診しましょう。
日々のブラッシングの際に被毛の変化もよく観察してあげましょう。
獣医師:丸田 香緒里
◆丸田 香緒里 プロフィール
日本大学卒。動物病院勤務後、「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。ペット栄養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、メンタルケアカウンセラーなどの資格を生かし、病院での診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、企業顧問、製品開発など活動は多岐にわたる。
HP:http://animallifepartner.com/